校長室日誌

2018年10月の記事一覧

 栗は秋の味覚の代表格。洋菓子店や和菓子店にさまざまな栗のお菓子が並び、甘党にはわくわくする季節です。栗御飯や渋皮煮なども、ぜひ味わいたい秋の味覚です。栗と日本人のつながりは古く、縄文時代にまでさかのぼります。青森県青森市にある三内丸山遺跡の発掘で、原始的な狩猟生活をしていたと考えられていた縄文時代の人々は、実は集落をつくって暮らし、その周りに栗やクルミの木の林を作って、その実を主食にしていたことがわかりました。栗は大事な食料であり、縄文時代から栽培されていたのです。弥生時代以降、雑穀の栽培や稲作が始まっても、栗は飢饉などに備える救荒作物として植えられてきました。また、栗の実を干し、臼でついて殻と渋皮を取り除いたものを「搗ち栗(かちぐり)」といい、保存食として用いられてきました。臼でつくことを「搗つ」といい、それが「勝つ」に通じることから「勝ち栗」とされ、勝利を祈願する縁起物として戦国武将が戦の前に食べたといわれます。二ホングリは日本原生の野生種で、柴栗(シバグリ)と呼ばれ、今も山野に自生しています。栽培種は果実が大きく、味も良いのが特徴です。有名な「丹波栗」は京都の丹波地方で採れる大栗の総称で、江戸時代には将軍家や御所にも献上されたそうです。チュウゴクグリは「天津甘栗」としておなじみの栗です。小粒ですが、渋皮がむきやすく、焼き栗で食べるとおいしいです。ヨーロッパグリは樹勢が強く大木になりますが、果実の大きさは二ホングリより小さめです。渋皮がむきやすいのも特徴です。街角のあちこちで焼き栗として売られており、お菓子や料理にもよく使われます。栗にはカリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、亜鉛、鉄など私たちの健康に欠かせないミネラルが豊富に含まれています。また、葉酸などのビタミンB群や食物繊維も多く含んでおり、栄養的にも優れた食べものです。また、栗の木は他の木材に比べて、耐水性や耐久性にすぐれているので、昔から家の屋根や床板、柱などに重用されていました。明治時代になって鉄道が開設されると、枕木として利用されたのが栗の木です。鉄道が日本中に伸びていったこの時期、全国の莫大な量の栗の木が伐採されていきました。コンクリート製の枕木が登場するまで、日本の鉄道発展の陰には栗の木の多大な貢献があったのです。

 

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わらの活用

 稲は米以外にもたくさんの副産物を人々にもたらしてきました。特に茎の部分、「わら」はさまざまなな方法で利用されてきました。日本人が稲作を始めたのは縄文時代と言われています。その頃の収穫は、穂だけを刈り取る「穂苅り」で、田んぼに残ったわらはそのまま土に還っていました。7~8世紀頃になると、収穫に鉄製の鎌などが使われるようになり、稲を根元から刈り取る「根刈り」に変化しました。刈り取られた稲を脱穀して米を収穫し始めたことで、大量のわらが残ることになり、そのわらを使ってさまざまな生活用品が作られ、利用されてきました。特にわらの文化が発展したのは江戸時代です。江戸時代には多くの農書が残されていますが、当時使われていたわらで出来た、さまざまな生活用品が紹介されています。わらは、そのまま燃料や飼料、畜舎の敷きわらなどにも使われます。ハカマを取った「すぐりわら」は、屋根葺きや土壁に使われますし、しめ縄やしめ飾りにも使われます。このすぐりわらを叩いて加工しやすくしたものが「叩きわら」です。これを使って作られたさまざまな道具の例を挙げてみました。今は使われなくなったものもたくさんあります。着るものとしてはわらじ、わらぐつ、かさ、みのなど。生活用品としてはわら縄、かご、いずめ(おひつ入れ)、鍋敷き、べんけい(串をさすもの)、円座、むしろ、畳床、縄袋、縄のれん、わら細工の馬などの飾り物など。この他、煮豆をわらで包んで発酵させた納豆は、わらがなければ生まれなかった食べ物です。様々な形で使われたわらの加工品は、傷むと補修されながら使われ、最後には燃料として燃やされたり、田畑の肥料にされたりして土に還りました。そして、また新しい稲を育む基になったのです。日本人は稲を上手に利用し、使い尽くす無駄のない生活をしてきました。最近では、若者の間では米のわらよりも、ワンピースの「麦わらのルフィ」のほうが有名でしょうか?

        
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稲刈り

 稲刈りが学校の周りの田んぼでおこなわれています。稲刈りは古来より日本の農村における秋の代表的な風物誌です。日本では第二次世界大戦後も長く、鎌を用いて手作業で稲刈りが行われました。稲刈りに使用する鎌は、刃先が鋸になった特殊なもので、イネの茎の切断が容易に出来るよう工夫されていました。しかし、稲刈りの作業は近年のコンバインの登場によって大きく様変りしました。コンバインは1940年代に初めて登場し、高度経済成長期以降徐々に普及しました。稲刈りから脱穀までの作業を一貫して行えるのがコンバインの特徴です。稲刈りから脱穀をまとめておこないますが、その間籾の乾燥工程がないので、脱穀された籾は直ちに専用の穀物乾燥機にかけられます。現在でも、山間地や棚田など大型の農業機械の導入が困難な田んぼや、米の栄養や旨味を増したいと言う目的で、バインダーで刈り取り、稲木にかけて乾燥、ハーベスターで脱穀するという組み合わせで収穫するか、もしくは鎌を用いた従来どおりの作業方法が採られています。コンバインの普及により作業時間は大幅に短縮されたが、車両後方に排出される藁のくずが皮膚に付着すると、比較的大きな痒みや肌荒れが起きる為、コンバイン搭乗者以外の作業従事者は、作業時の風向きに十分注意する必要があります。稲刈りをおこなっている農家が顔を覆うようにタオルや手ぬぐいを着用しているのは、その痒みを事前に防ぐ為であるようです。近年は高価ですがキャビン付きの車両も登場しており、搭乗者の負担は大幅に減少しています。刈り取られた稲は水分が多いので、稲架にかけて天日干しされ、十分乾燥した頃に脱穀をおこないます。人力のみに頼った頃は、多人数が必要であったため、当然のように子供も動員されました。そのため、農村域では学校でも休暇を設定しているのが普通でした。農繁休暇と呼ばれましたが、一般には稲刈り休みと呼んでいました。神社で神に捧げる少量の稲を神職や氏子などの手により作られている場合もあり、この場合、稲刈りは大体手作業でおこなわれます。皇居でも生物学御研究所脇に御田があり、毎年9月下旬に天皇が自ら手作業で稲刈りをおこないます。この行事は昭和天皇が始めたもので、今上天皇にも引き継がれています。収穫した稲は伊勢の神宮に納めたり、皇居内の神事に使うほか、天皇一家の食事にも使用されています。

 
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鮭(しゃけ、サケ)

 「食欲の秋」の第2弾として鮭について調べました。秋の味覚といえば鮭。塩焼きやムニエル、スモークサーモン、寿司も美味しいですね。鮭は9~11月に川を上ります。主に東北・北海道沿岸によってきた鮭を「秋鮭」「秋味」と呼びます。鮭は川で誕生して海に下り、産卵までの数年間は北の海で成長し、産卵期の秋に再び生まれた川を上り、一生を終える代表的な回遊魚。なぜ、生まれた川に戻ってこれるのかは未だ謎ですが、川に遡上する直前の秋鮭は脂が乗って、最高に美味しい状態です。鮭は身が赤いので、赤身魚と思われがちですが、じつは白身魚です。あの赤は、白身魚特有の速筋で、エビやカニを餌にしているうちに赤くなっていきます。鮭には色々種類があります。「○○鮭」と呼ばれているものだけに限定すると、「銀鮭」「紅鮭」「白鮭」の3種類になりますが、一般的に日本で鮭というと「白鮭」になり、「銀鮭」「紅鮭」は日本の川には上りません。秋鮭も「白鮭」の一種です。産卵シーズンの9~11月に東北・北海道沿岸に寄ってきたものを秋鮭、秋味と呼び、5~7月頃にとれる鮭は、季節外れという意味で時鮭、時不知(トキシラズ)と呼ばれます。平安時代中期に律令について記された「延喜式」に、越後の国から朝廷に納める税として、鮭が献上されていたことが書かれています。産地で加工されてから運ばれてきたようで、部位によって呼び名は様々。鮭、鮭子(さけこ)、内子鮭(こごもりざけ)、氷頭(ひず)、背腸(せわた)、鮭児(けいじ)、楚割鮭(すはやりざけ)などがあります。平安時代の記録にも残っているように、昔から鮭は「捨てるところがない」と言われています。牛肉や豚肉と比べ、低カロリー低脂肪で、たんぱく質は消化吸収がよく、子供・病人・高齢者に最適なようです。脳の活性化に良いといわれているDHAもたっぷり。注目すべきは、鮭の赤色の色素でもあるアスタキサンチン。この成分は非常に強力な抗酸化作用を持っています。これから、ますます美味しくなる栄養たっぷりな「秋鮭」を、色々な味で楽しみたいですね。

 
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 さて、今日は「食欲の秋」の第1弾として柿について調べてみました。秋が深まり、柿の木に色づき始めた柿の実がなっているのをよく見かけます。「甘いのかな?渋いのかな?」と気になりませんか。なぜ、柿は甘かったり渋かったりするのでしょうか。柿には「甘柿」と「渋柿」がありますが、この違いは柿に含まれる渋み成分「タンニン」が口の中で溶けるかどうかによって決まります。未熟なうちは甘柿も渋柿も「可溶性」タンニンを含んでいますが、甘柿は成熟するとタンニンが「不溶性」(水に溶けない性質)になるため、渋く感じません。一方、渋柿は成熟してもタンニンが可溶性(水に溶ける状態)のままなので渋く感じるのです。おいしい柿を選ぶポイントは
①へたがきれいで、へたが実に張りついていて、実との間に隙間がないもの。
②色むらがなく、全体が濃い柿色。薄い色のものは甘みが少ない。
③皮に張り、つやがある。
 一方、渋柿も渋抜きをすることで、甘くなって食べられるようになります。一般家庭でもよく用いられているのが、アルコールを使った方法で、渋柿のヘタの部分にアルコール濃度の高い焼酎やブランデーなどを塗って数日間置いておきます。干し柿にすると渋みは自然に抜けます。昔話などにもよく登場する「柿」。日本人にとってはなじみの深い果物といえます。古来から日本にあり日本原産のようなイメージですが、元々は古代に中国から伝わったとされています。その後改良が進み、日本の風土に合った現在の柿の形になりました。柿にはビタミンCやビタミンA、カロテン、タンニン、カリウムなどの栄養素が豊富に含まれています。また特徴的なものとしてアルコールデヒドゲナーゼという酵素が含まれており、このアルコールデヒドロゲナーゼこそが二日酔い解消に効果を発揮する重要な成分と言われています。旬のこの時期に思いっきり味わいたいですね。

 
 
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