夏の涼味 心太(ところてん)と寒天
冷たい口当たりとのど越しの良い食感が、暑い季節にぴったりの心太(ところてん)と寒天。これらの歴史は古く、古来より日本人に愛されてきた日本の伝統食品。味わいも使い勝手もいろいろあります。心太(ところてん)が大陸から日本に伝わったのは古く、仏教伝来の頃、精進料理のこんにゃくなどとともに製法が伝えられたと考えられています。奈良時代・平安時代にはところてんを売る店もできましたが、当時は上流階級のぜいたくな食べものでした。この頃はところてんにからし酢をかけて食べていたということです。ところてんは、天草(てんぐさ)という海藻を煮溶かし、冷まして煮凝らせたもの。そこで、天草は煮凝る藻ということで「凝海藻(こるもは)」「凝海藻葉(こごるもは)」と呼ばれ、煮凝ったものは「こころふと」と呼ばれて「心太」という漢字が当てられました。その後、上の漢字を訓読み、下の漢字を音読みする湯桶読みから「こころてい」と呼ぶようになり、「ところてん」に変化したと言われています。ところで、ところてんはさっぱりとした酢醤油で食べることが多いと思いますが、関西では黒蜜をかけて食べることがあります。奈良~平安時代、貴族の間では中国から輸入された砂糖が流行していたので、ところてんにも砂糖から作られた黒蜜を使って甘くして食べたのではないかと言われています。また、当時は砂糖も薬の一つとして扱われており、関西には薬種問屋が集まっていたので、一般にも浸透していったと考えられています。一方、寒天は江戸時代になって、京都伏見の美濃屋太郎左衛門が、偶然凍結したところてんから結晶水が抜け出して寒天質が残ることを発見。寒天は、ところてんから生まれた日本の伝統食品といえます。「寒天」という名前は、日本にいんげん豆などを伝えた明僧、隠元禅師が名付けたと言われています。寒天は、料理やお菓子作りに使われるほか、オブラートや細菌培養基などにも用いられています。海藻の一種である天草などから作られているので、食物繊維やミネラルなどをバランス良く含んでいます。寒天の食物繊維は、腸内をきれいにして便秘・肥満・高血糖を防ぐ働きがあります。また、日本人に不足しがちといわれているカルシウムも豊富です。おいしく食べて生活習慣病予防にも一役買ってくれるヘルシーな食品です。なお、寒天とゼラチンはよく似ていますが、実は全く違うものです。寒天は100%植物由来のものであるに対して、ゼラチンは牛などの動物の皮のなかの蛋白質から作ったもので、成分も製法も全く違ったものになります。